高松高等裁判所 昭和54年(く)20号 決定 1979年6月21日
少年 S・S(昭三五・四・六生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は附添人○○○○作成名義の抗告申立書に記載のとおりであるから、これを引用する。
所論は、原決定は少年に対し中等少年院送致の処遇をしたが、非行性、保護者の保護能力等において差のない他の二名の共犯少年についてなされた短期処遇勧告がなされなかつた点において著しく不当であるというのである。
そこで、本件少年保護事件記録及び少年調査記録を調査すると、原決定がその処遇事由の項で説示するところと同一の理由により、少年を中等少年院に送致することが少年の健全育成を図るうえで相当であると認められる。
申立人は共犯少年二名に対する処遇との権衡をいい、当審における事実取調べの結果によれば、原裁判所は同人らを中等少年院(一般短期処遇)に送致する旨決定した事実が認められるが、共犯者といえども常に同等の処分をなすべきものではなく、非行内容と少年の性格、資質、環境、非行歴等を総合して少年の健全育成の見地から個別的になさるべきである。そして、少年は本件非行において他の少年二名はもとより他の成人をもさしおいて終始積極的、主導的な役割を演じたものであり、平素も成人と交遊し夜間徘徊して女性に接近しており、本件もこのような日ごろの行動の延長線上の出来事とみることができること、他の少年のうち一名は多分に自己の意思で犯行をやめ、もう一名も現場において犯行から離脱しようとしたが、共犯として同じだと言われ姦淫した事情も認められること、非行歴においても一応の差異を認めうることなどからして、他の二少年とは異るものがあるといわざるを得ず、その処遇を単純に対比することができないのみならず、鑑別結果に顕われた少年の性格、原決定指摘の環境等に照らすと原決定が他の二少年に対する少年院送致決定に際しては「一般短期処遇」相当の意見を付したのに対し、少年に対する決定にそのような短期処遇相当の意見を付さなかつたのは適正な措置というべきである。
よつて、本件抗告は理由がないから少年法三三条一項を適用してこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 桑田連平 裁判官 川上美明 佐々木條吉)